ルコルニュ内閣崩壊、マクロン政権に打撃 与野党対立が激化

宇津木 柊
经过

政権発足直後に辞任が発表

フランスのルコルニュ首相は10月6日、マクロン大統領に辞表を提出し、内閣が総辞職した。新政権の発足からわずか1日での崩壊は、近代史上まれな事態であり、与野党の対立の深さを浮き彫りにした。首相在任は27日間で、発足直後の総辞職は「政治的事故」とも評されている。

首相は退任演説で「野党の強硬姿勢と与党内の選挙戦略が歩み寄りを阻んだ」と述べ、協調の試みが失敗した経緯を明かした。

内閣の顔ぶれが旧体制と重複

問題視されたのは人事の継続性だった。新内閣は、緊縮政策で不信任を受けたバイル前内閣と大きく変わらず、レスキュール氏が経済・財務相に、ルメール氏が国防相に就任。これにより、野党だけでなく連立与党からも「変化の欠如」との批判が高まった。

与党パートナーの共和党内でも不満が蓄積し、ルタイヨー内相は「改革の意志が見えない」と発言。党内で連立解消論が浮上していた。

政治的不安が市場を直撃

辞任の報が伝わると、ユーロは急落し、フランス株も下落。財政赤字がEU上限の2倍近くに達している現状に、市場関係者は警戒感を強めている。格付け会社はフランスの公的債務(GDP比113.9%)を注視し、長期的な信頼性に疑問を呈している。

アナリストのクリス・ボウシャン氏は「短命政権の繰り返しが投資家心理を冷やしている」と指摘した。

野党勢力、解散と大統領退陣を要求

極右政党国民連合(RN)のバルデラ党首は「国民議会を解散し、総選挙で信任を問うべきだ」と主張。一方、左派勢力「不服従のフランス」はマクロン大統領の辞任を要求。国内では「政治改革か選挙か」をめぐる議論が高まっている。

政局の混迷は、マクロン政権の支持基盤を大きく揺るがし、欧州諸国にも不安定要因として波及している。

欧州に広がる政治不安の影響

フランスの政治危機は、欧州連合全体にも影響を及ぼしている。経済停滞と高インフレに直面する欧州では、フランスの混乱がユーロ圏の政策協調に悪影響を及ぼすとの懸念がある。マクロン政権が今後、どのような形で政治的安定を取り戻すかが焦点だ。

この記事をシェア