サイバー攻撃で受注業務が全面停止
アサヒグループホールディングスは9月29日午前、基幹システムが不正アクセスによる障害を受けたことを確認した。調査の結果、ランサムウエアによる攻撃の可能性が高いとして、当局に正式に報告した。酒類や飲料、食品の受注・出荷は全面的に停止しており、国内の販売網に支障が出ている。
物流現場での臨時対応が続く
通常業務が不可能となったため、同社は電話による注文受付と手作業での入力処理に切り替えた。この一時対応により、主力商品の「スーパードライ」など一部の定番品は配送が再開されたが、効率は大幅に低下している。物流の現場では遅れが生じており、供給の安定性に不安が広がっている。
新商品発売スケジュールに影響
システム障害の影響で、10月6日以降に予定していた飲料・食品12品の発売延期が発表された。延期対象には「ウィルキンソン」や「ミンティア」の新製品が含まれ、市場投入戦略が大きく後退する形となった。新たな発売日程は調整中で、消費者や取引先に不透明感が残る。
他社や外食産業への波及
アサヒと共同配送を行っているサッポロホールディングスでは、一時的に配送の遅れが発生した。居酒屋チェーンなど取引先は現在の在庫で営業を維持しているが、供給停滞が長引けば他社製品への切り替えを迫られる可能性がある。業界内での競合バランスにも影響が及ぶ恐れが出ている。
復旧への時間と安全性確保の課題
現時点でシステム完全復旧の見通しは示されていない。攻撃の性質上、復旧作業には時間がかかる可能性が高く、影響が長期化すれば流通と販売にさらなる混乱を招く。今回の事態は、食品・飲料業界におけるサイバーリスク管理の重要性を浮き彫りにしている。