シリアで民族衝突激化 イスラエルが政府機関に報復空爆

早瀬 涼真
经过

ドルーズ派とスンニ派の争いが武力介入を招く

シリア南部で発生した宗派間の対立が国際的緊張を引き起こしている。スワイダ県では13日からドルーズ派住民とスンニ派系の遊牧民ベドウィンとの間で衝突が起こり、死傷者が続出した。イスラエルはこの対立に対し、ドルーズ派保護を名目に軍事行動に踏み切った。

ダマスカス中枢への攻撃で事態が深刻化

16日、イスラエル空軍はシリア暫定政府の中枢であるダマスカスの大統領府や国防省周辺に大規模な空爆を行った。アルジャジーラによると、市内中心部の複数の施設が損傷し、煙とがれきが広範囲に確認された。空爆は無人機による初動攻撃の後、戦闘機によって行われたと見られる。

シリア暫定政権、国境展開部隊の撤収を拒否

イスラエルは14日から15日にかけてスワイダ周辺に展開するシリア暫定政府の軍部隊に撤収を求めたが、応じられなかった。このため、軍事的な圧力を強化したかたちとなった。シリア側はこれを「自国の主権を脅かす行為」と位置づけ、強い抗議を表明している。

ドルーズ派指導者の呼びかけが引き金に

今回の対立を巡っては、ドルーズ派の指導者ヒクマト・アルヒジュリ師が「政府軍が停戦協定を破りスワイダを攻撃した」と非難し、住民に対し武装抵抗を促す声明を出したことが影響したとされる。これを受けてイスラエル政府が軍事行動を開始したと見られている。

260人死亡報道も、緊張はさらに高まる

現地報道では、今回の一連の衝突による死者が260人に上るとの情報も出ており、被害は拡大している。また、国境地帯ではイスラエルとシリアの住民が互いに越境を試みる動きもあり、イスラエル軍がこれを制圧したとされる。シリアではアサド前政権の崩壊以降、宗派間の緊張が続いており、新たな火種となる可能性が高い。

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