輸出額は前年比減も5月より大幅に回復
中国税関当局が発表したデータによれば、2025年6月の対米輸出は381億ドルで、前年同月比16.1%減少した。しかし、5月に記録した34.5%減からの回復が目立ち、米中両国が合意した一時的な関税引き下げの影響が色濃く反映された形となった。
米国からの輸入も前年に比べて15.5%減の116億ドルだったが、5月(18.1%減)より減少幅が縮まり、貿易黒字はそれに伴い16.4%減少している。
米中合意による駆け込み輸出が活発化
5月中旬に成立した米中間の追加関税緩和措置は8月中旬までの期限付き合意であり、これを受けて中国側が輸出を前倒しした可能性がある。この回復は短期的な変動に過ぎず、貿易構造の改善とは結びつかないとの見方が支配的になっている。
4月には100%超の報復関税が双方に課され、米中関係は大きく悪化していた。今回の関税緩和はその場しのぎの対応に過ぎず、協議の行方によっては再び対立が深まる可能性がある。
世界市場への輸出は堅調な増加傾向に
中国全体の6月の輸出は3251億ドルで5.8%の増加を記録した。これは5月の4.8%増を上回る伸びであり、アメリカ以外の国々への輸出が貢献している。特に、ASEAN向け輸出が13.0%増と大きく伸びたほか、EUは6.6%増、日本は4.8%増と好調だった。この結果、1~6月期全体の輸出は5.9%増加している。
内需低迷が輸入に影響を与える構図
一方で、同期間の輸入は3.9%減とマイナスを記録しており、国内需要の低迷が反映されているとみられる。6月単月では2104億ドルの輸入となり、前年同月比では1.1%増に転じたものの、全体的な回復には至っていない。これにより、6月の貿易黒字は1147億ドルと引き続き高い水準を維持しているが、輸入の勢いが鈍いことは中国経済の課題として残っている。
貿易戦略の多極化が政策の柱に
税関総署の王令浚副署長は会見で、中国が単独主義や保護主義に直面する中で国際的な「友人の輪」を広げていると述べた。アメリカに依存せず、多様な市場に輸出先を拡大する方針を強調した。アメリカが来月以降、東南アジア諸国への関税適用を拡大する可能性もあり、こうした輸出構造の見直しは今後の戦略においても重要性を増している。