大統領専用機内で記者団に売却交渉を示唆
トランプ米大統領は7月4日、機上での記者団とのやり取りの中で、TikTok米国事業の売却を巡る協議を7日または8日に中国側と開始する方針を示し、交渉相手として習近平国家主席またはその代表者を想定していると述べた。
トランプ氏は「われわれとしては、ほぼ合意に達している」と述べ、すでに協議が大詰めを迎えているとの認識を示した。
TikTok売却の期限を90日先送りする内容の大統領令
6月には、TikTok売却をめぐる期限を90日間延長する大統領令に署名し、新たな売却期限を9月17日と設定した。これにより、売却交渉に向けた準備と調整のための時間が確保されたかたちとなる。
トランプ政権は、TikTokを「国家安全保障上のリスク」と位置づけ、米国内での完全なコントロール体制の確立を目指している。
売却案の再浮上と政治的背景
過去には、TikTokの米国事業を新設法人として分離し、米資本が過半を占める構造への移行が提案されていた。しかし、トランプ氏による関税引き上げなど強硬な対中姿勢を背景に、中国側がこの計画の承認を見送っていた。
今回の協議再開は、一時棚上げされたこの売却案を再検討する機会となる可能性が高い。
中国の反応とトランプ氏の見解
TikTok売却の成立には、中国政府の承認が依然として前提条件とされる。トランプ氏は「習主席とは良好な関係にある」と述べたうえで、「この取引は両国にとって利益がある」と語り、中国側の譲歩に期待をにじませた。
ただし、「自信があるわけではないが、合意に至ると思っている」とも付け加えており、楽観一辺倒ではない姿勢も見せている。
技術と地政学が交錯する売却交渉の行方
TikTok米国事業の売却を巡る動きは、単なるIT企業の取引にとどまらず、米中のパワーバランスをめぐる駆け引きの最前線にある。安全保障、投資ルール、通商政策が複雑に絡み合い、技術覇権をめぐる新たな対立構造の一端を示している。
トランプ大統領の強硬な交渉戦略と、ベセント財務長官による別ルートでの対話が交錯する中、TikTokの運命は今後数週間で大きく動く可能性がある。