通信と金融の融合加速 NTTグループが銀行機能取得

笠原 美琴
经过

通信業界で出遅れていたドコモが銀行事業へ本格参入

NTTドコモは、長らく銀行機能を持たない通信事業者として位置づけられてきた。今回、住信SBIネット銀行の株式65%を取得し、完全子会社とすることで、この分野での遅れを取り戻す構えだ。約4,200億円をかけたこの大型買収は、通信と金融の垣根を越えたビジネス展開に向けた大きな転換点となる。

ドコモの買収戦略とTOBの具体的な内容が判明

今回の買収は、SBIホールディングスと三井住友信託銀行が34%ずつ出資する住信SBIネット銀行の株式を、ドコモが段階的に取得する形で進められる。5月30日より1株4,900円でTOBが開始され、最終的にSBIが保有する株も取得する予定である。これにより、議決権の過半数を確保し、子会社化が完了する見込みだ。

NTTが1100億円を投じてSBIとの協業体制を強化

NTTは、SBIホールディングスが実施する第三者割当増資を引き受け、1,100億円規模の出資を決定した。これにより、両グループは金融分野での協力を深化させ、より広範なビジネス連携を展開する見通しだ。資金面での連携にとどまらず、技術やサービス面での融合も視野に入れている。

フィンテック競争が加熱する中での戦略的布陣

他の通信事業者がすでに金融サービスで成果を上げる中、ドコモも証券やローン事業を展開してきたが、銀行機能の欠如が指摘されていた。住信SBIネット銀行をグループに加えることで、資産運用や融資にとどまらず、日常的な決済・貯蓄機能まで提供可能となり、統合的なフィンテック戦略が完成に近づく。

経営者発言が示す中長期的ビジョンと資金用途

NTTの島田社長は、テクノロジーと金融を融合させた革新の意志を表明。ドコモの前田社長は、「スマホ1台で完結するサービス」をキーワードに掲げた。一方、SBIの北尾社長は、NTTとのシナジーによって顧客基盤が飛躍的に拡大するとし、出資金は進行中の買収案件や新生銀行の公的資金返済に活用する方針を示した。

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