「年収106万円の壁」撤廃へ 年金制度改革の焦点と課題が浮き彫りに

長峰 詩花
经过

働き方多様化に対応した年金法案の概要

政府は5月16日、パートタイム労働者などの厚生年金加入を促進するため、「年収106万円の壁」を撤廃する年金制度改革関連法案を閣議決定し国会に提出した。法案は段階的に適用対象を拡大し、企業規模の要件も10年以内に撤廃することを盛り込んでいる。これにより、保険料負担を理由とした働き控えの抑制を狙う。

保険料負担増に対する企業支援策の内容

従業員51人以上の要件を段階的に緩和することで、新たに約200万人が厚生年金に加入可能になる。一方、企業の負担増加を和らげるため、3年間は企業が通常より多くの保険料を負担し、その分を全額国が補助する仕組みが導入される。こうした支援策は企業の反発緩和を目的としている。

基礎年金の底上げ見送りと野党の反発

当初、基礎年金の給付水準を支えるために厚生年金積立金の活用が検討されたが、自民党内の反対で見送られた。野党側はこれに対し、将来の年金受給額が減少する懸念を示し、修正案の提出を求めている。特に就職氷河期世代への影響が大きく、法案審議の大きな争点となる見込みだ。

年金制度の包括的見直しが進む

個人事業主の厚生年金適用拡大、標準報酬月額の上限引き上げ、在職老齢年金の減額基準の緩和など、多岐にわたる改正も同時に行われる。遺族厚生年金の男女差是正や、子育て世帯向けの年金加算の見直しも含まれ、制度の公平性向上が目指されている。

法案成立の行方と社会的影響

今回の年金改革は少子高齢化や働き方の変化に対応するもので、国民生活に大きな影響を及ぼす。保険料負担の問題や給付水準をめぐる議論は依然として続いており、今後の国会審議でどのように折り合いがつくかが注目される。

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