世界初の人型ロボットマラソン、中国が見せた技術の現在地

井村 智規
经过

北京で開催された新たな試みが話題に

中国・北京で開催されたハーフマラソンでは、世界初となる人型ロボットのレース参加が実現した。合計21体の二足歩行ロボットが専用のコースを走り、人間のランナーとは別に順次スタートした。出場には遠隔操作または自律走行が可能であることが求められ、各ロボットにはサポート役の伴走者も付けられた。

走行性能に差が見られた出場ロボット

出場したロボットの中には、安定した走りを見せたものから、途中で転倒する機体まで様々だった。中でも注目されたのは、北京市の企業が開発した「天工」というロボットで、21キロを約2時間40分で走破し、最も優れた成績を収めた。この結果は、ロボット工学における歩行制御や耐久技術の進展を示すものとして注目されている。

スタートアップ企業の技術的挑戦

大会に参加した企業のひとつ「霊宝CASBOT」は、設立から間もないスタートアップでありながら独自のAIを搭載したロボットを開発している。社員数は30人ほどと少数ながら、清華大学や北京理工大学出身の若手技術者が中心となっており、ロボットの軽量化や耐熱対策など、長距離走行を見据えた設計が行われていた。

実用化を見据えた開発動向

各企業は今回のマラソンで得られたデータをもとに、バッテリー性能の改善や部品の耐久性強化に取り組む方針を示している。人型ロボットはすでに教育や研究現場での活用が進んでおり、今後は工場や高齢者支援といった場面での導入が期待される。実用面での課題は残されているものの、開発は着実に前進している。

技術展示の場から商業展開へ

今回のマラソンは、中国がロボット工学を単なる技術誇示にとどめず、将来的な商業利用を視野に入れていることを示している。低価格化や機能特化によって市場拡大が進み、今後の国際競争にも影響を与えることが予測される。社会課題への対応手段としてのロボット活用が加速するなか、こうした実証の場が技術革新の起点となっている。

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