TSMCの1,000億ドル投資発表と米政権の圧力が交差

早瀬 涼真
经过

TSMCの戦略的投資が米政権の政策判断を左右

台湾を拠点とする世界最大の半導体受託製造企業TSMCは、2025年3月にアリゾナ州への追加投資として1,000億ドルを拠出する計画を明らかにした。この動きに対し、トランプ大統領は4月8日の会合にて、「もし工場建設を行わなければ、最大で100%の税を課す」と述べ、強硬な姿勢を打ち出した。

トランプ氏、国家利益を背景に強い発言

トランプ大統領の発言は、米国の製造基盤を強化し、海外依存を軽減するという国家戦略に沿ったものである。過去にTSMCはバイデン前政権から多額の補助金を受け取っており、トランプ氏はこれを「自身は金を出さない」と明言する形で距離を置いている。

米中対立の文脈で半導体政策が注目される

TSMCのアリゾナ進出は、米中対立の中でサプライチェーンの安定確保という観点から重要な意味を持つ。アメリカ国内での製造体制強化は、戦略物資としての半導体をめぐる安全保障上の懸念にも直結する。トランプ氏の税制措置に関する発言は、このような地政学的リスクへの対処と読み取れる。

TSMCはグローバルな供給責任を継続

TSMCの魏会長は台湾での記者会見において、「米国市場の需要に応えるための投資である」と説明し、地域間での投資バランスには変更がないことを強調した。アメリカ、台湾、日本といった拠点への並行的な投資を継続し、グローバルサプライチェーンの維持を図る姿勢を明確にしている。

米国工場建設は「選択」か「義務」か

TSMCの対米戦略は、企業の自主的判断と見られてきたが、今回のトランプ発言により、実質的に米国での工場建設が「義務」となる可能性も浮上している。企業のグローバル戦略と各国政府の政策が複雑に絡む中、今後の動向に注目が集まる。

この記事をシェア
コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です