ソフトバンクが生成AI向け「Garan AI」始動、報道30社超参加で回答精度と情報の信頼性向上へ

宇津木 柊
经过

報道情報を生かすAI基盤が試験運用へ

ソフトバンクは7月22日、新聞社や出版社などが制作した記事を生成AI向けのデータに整える情報基盤「Garan(ガラン)AI」の試験運用を始めた。各社から預かったコンテンツを、生成AIが参照しやすい形式へ変換し、AIサービスを開発、運営する企業に提供する。信頼できる記事情報を回答作成に利用できる環境を整え、生成AIが示す内容の正確性を高めることが目的となる。

同日には試作版が公開され、AI事業者を対象とする利用申請の受け付けも始まった。試験期間中に情報の処理方法やサービスの有効性を確認し、運用上の課題を洗い出す。ソフトバンクは半年程度をかけて仕組みを改良し、2027年1月以降の正式な事業化につなげる計画である。

AIが参照しやすいデータ形式へ加工

新たな仕組みでは、コンテンツを持つ新聞社や出版社が、ソフトバンクの管理する基盤へ記事情報を預ける。ソフトバンクは提供された内容を、そのまま原文として扱うのではなく、元の文章を復元しにくい状態へ処理する。そのうえで、生成AIが情報を検索、参照しやすいデータへ整備する。

加工後の情報は、利用申請を行ったAI事業者に提供される。AIサービス側は、利用者から寄せられた質問への回答を作成する際、報道機関が蓄積してきた記事情報を活用できる。一般に公開された情報を無秩序に収集する方法とは異なり、提供元が明確なコンテンツを利用できる点が特徴となる。

生成AIは学習や回答作成に用いる情報の品質によって、出力内容の精度が左右される。新聞記事や通信社の記事を利用できる環境が広がれば、事実関係を踏まえた回答を作るための情報源が増える。Garan AIは、報道コンテンツとAIサービスを結ぶ共通基盤として運用される。

全国紙や通信社など30社超が参加へ

記事提供には、毎日新聞社、産経新聞社、共同通信社、スポーツニッポン新聞社などが参加の意向を示している。信濃毎日新聞社やデーリー東北新聞社をはじめとする地方紙も加わり、申し込みを行った報道機関は30社を超えた。全国規模のニュースだけでなく、各地域に密着した情報も集まる見通しとなった。

複数の報道機関が参加することで、政治、経済、社会、スポーツ、地域情報など、幅広い分野の記事を扱えるようになる。AI事業者にとっては、異なる地域や分野を取材する報道各社の情報へ、共通の仕組みを通じて接続できる利点がある。参加する媒体が増えれば、AIが利用できる情報の範囲も拡大する。

一方、報道各社にとっては、自社の記事をAI分野へ提供する新たな経路となる。記事がどのような条件で利用されるかを管理しながら、AIサービスの情報源として活用できる。利用されたコンテンツに対しては、提供した企業へ対価が渡る制度も組み込まれる。

誤情報の抑制と回答品質向上を目指す

生成AIをめぐっては、事実と異なる回答が表示されたり、情報の出所が分かりにくかったりする問題が指摘されている。インターネット上には作成者や根拠が明確でない情報も多く、AIが不確かな内容を参照すれば、誤った回答の拡散につながる。信頼性の確認された記事を使える基盤は、こうした課題への対応策となる。

報道機関の記事は、取材や確認作業を経て作成されている。Garan AIを通じて提供された情報をAI事業者が利用することで、回答の根拠となるデータの質を高められる。利用者の質問に対して、より適切な内容を示すことが期待される。

ソフトバンクは、情報提供者の権利を確保しながら、AIによるデータ利用を進める方針を示した。記事を単純に複製して配布するのではなく、AI向けに加工した形で流通させる。報道情報を安全に利用するための枠組みを整え、AIサービスの品質改善につなげる。

官公庁などへの提供元拡大も視野

試験運用では、実際にAI事業者が加工データを利用し、回答精度や使いやすさを検証する。ソフトバンクは得られた結果を基に、データ処理や提供方法を改善する。参加する報道機関やAI事業者との調整も進め、2027年1月以降の商用サービス開始を目指す。

将来的には、新聞社や出版社だけでなく、官公庁やウェブサービス事業者などからも著作物や情報を受け入れる構想がある。公的機関の情報や専門性の高いデータが加われば、生成AIが参照できる分野はさらに広がる。異なる提供元の情報を集約し、信頼性を備えたAI向けデータ基盤として拡張する方針である。

Garan AIの運用は、報道記事を生成AIの回答品質向上へ結び付ける新たな取り組みとなる。参加企業の拡大と試験結果を踏まえながら、情報提供者、AI事業者、サービス利用者のそれぞれが活用できる仕組みの確立が進められる。

この記事をシェア