国内投資を呼び込む規制改革答申の狙い示す
政府の規制改革推進会議は6月29日、AI関連制度の見直しを含む答申を高市早苗首相に提出した。答申は、先端技術の進展に対し現行制度が十分に対応できていない分野を整理し、府省庁横断の取り組みを強化するよう求めた。制度整備を進めることで、民間企業による国内投資の拡大につなげる狙いがある。
高市首相は官邸で開かれた会議で、改革をスピード感を持って実行に移すと述べた。政府は答申に基づき、近く規制改革推進計画を策定し、閣議決定する見通しだ。答申は全55項目で構成され、AIやデジタル、GXなど成長分野に関わる幅広い制度課題を扱った。
AI基盤を支える制度整備の前進を示す内容
AIの利用拡大に向けて、答申が重視したのが次世代データセンターの建設促進である。AIの処理には大量の電力が必要となり、施設内にはリチウムイオン蓄電池を多数設置する必要がある。しかし、蓄電池は危険物として扱われるため、消防法や建築基準法の下で立地や設置数量に制約が生じている。
答申は、安全性を確保した上で規制を緩和し、データセンターの国内整備を後押しするよう求めた。AI基盤の整備が遅れれば、関連サービスや技術開発の展開にも影響する。国内での投資を促すためには、施設整備に必要な制度上の見通しを明確にすることが重要となる。
人手不足分野で技術活用を促す改革案へ進む
答申は、歩行型ロボットの普及に向けた制度整備にも踏み込んだ。AIによってロボットを自律的に動かすフィジカルAIの社会実装を進めるため、二足歩行型ロボットの法制度上の扱いを明確にするよう求めた。現在は道路交通法や道路運送車両法での位置付けがはっきりせず、歩道での実証実験に支障が出ている。
歩道で歩行者とともに実証を行えるよう、道路使用許可の審査基準を定めることも求められた。自動運転車については、安全基準を満たした「レベル2++」の車両を優良とみなす制度を設ける方針が示された。技術を実際の社会空間で使うための制度設計が、普及の前提として位置付けられている。
労働制度と在留資格の明確化を求める方向
労働環境の改善に関する提言も答申に盛り込まれた。建設業や運輸業など、季節や天候によって業務量の変動が大きい分野では、1年単位で労働時間を平均化する変形労働時間制の運用を柔軟にする方向で検討を進める。現行制度では勤務シフトを30日前までに確定する必要があり、悪天候など突発的な事態に対応しにくいとの声がある。
また、裁量労働制についても、民間企業から対象職種の拡大を求める声を踏まえ、対象の見直しを検討するよう促した。外国人労働者の受け入れでは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の業務範囲があいまいだとして、具体化を求めた。適正な受け入れにつなげるため、制度の明確化が課題とされた。
成長分野の実装力が問われる重要局面に入る
答申は、農業や医療にも制度改革の対象を広げた。農業では、農地のまとまり具合を示す集約率の算定方法を定め、ロボット農機やドローンの導入を進めやすくする。医療では、電子カルテ情報共有サービスの閲覧対象者や、本人同意を必要としない医療データの二次利用範囲について、拡充に向けた議論を求めた。
高市首相は、内閣官房に「AIデジタル改革推進チーム」を設ける方針を示している。府省庁を横断して調整を進める体制を整え、改革の実行力を高める狙いがある。規制改革は、技術の進展を制度面から支え、成長分野を国内投資につなげられるかが問われる段階に入った。
