中低所得層の手取り増を重視
政府は5月27日、給付付き税額控除の制度設計に関する原案を、超党派の実務者会議で提示した。内容は、中低所得の働く世代を主な対象に、税や社会保険料の負担を軽くすることを狙う。支援は個人単位で行い、所得に応じて給付額を調整する。
今回の制度は、現役世代の手取りを増やすことを目的に位置付けている。税負担だけでなく、社会保険料を含めた実質的な負担率を踏まえる点が特徴である。一定の勤労所得がある人を対象とし、働く人への支援を制度の軸に据えた。
対象者には、自営業者やフリーランスも含まれる。会社員だけに限定せず、働き方の違いを踏まえて支援範囲を設定する方向である。現役世代と同じように負担を担っている働く高齢者も、対象に加える方針が示された。
4段階の仕組みで給付を調整
政府原案では、所得水準に応じて給付額を4段階で変える考え方が示された。まず、住民税などが課税されない水準の人には、一定額を支給する。収入の把握が難しい層については、簡素な定額給付で対応する。
次に、所得が増える段階では給付額も増えるようにする。これにより、働いて収入を得るほど手取りが伸びる仕組みを作る。所得増加によって支援がすぐに失われる設計を避ける狙いがある。
一定の所得水準に達すると、給付額は横ばいとなる。その後、所得がさらに上がると給付額を段階的に減らし、最終的に支援対象から外す。急激な支援終了を避け、なだらかな制度運用を目指す内容である。
負担発生ラインへの上乗せを検討
原案は、「年収の壁」を超える所得水準への対応を重要な論点としている。税や社会保険料の負担が新たに発生すると、働く時間を増やしても手取りが伸びにくくなる場合がある。この問題に対応するため、該当する層に給付額を上乗せする方針が示された。
これまでの議論では、給与所得が発生する年収74万円、社会保険料負担が生じる年収106万円、所得32万円などが支援開始の目安として挙げられている。政府案は、こうした水準を踏まえながら制度を組み立てる。働き控えを抑えることも、制度設計上の目的となる。
子育て世帯にも追加的な配慮を行う。子どもの人数に応じて給付額を加算する案や、所得上限を広げる案が検討対象となった。家計負担の大きさを踏まえ、通常の所得連動支援に加えた仕組みを設ける方向である。
税額控除を外し給付型に一本化
今回の原案で特に注目されるのは、税額控除を組み合わせない点である。政府案は、制度を「給付に一本化」すると明記した。名称に「税額控除」が含まれる一方、実際の仕組みは給付を中心に構成する。
背景には、税額控除を導入した場合の事務負担がある。企業側の手続きが複雑になり、人手不足が続く中小企業に負担が集中するとの意見がこれまでの会議で出ていた。給付のみであれば、制度を分かりやすくし、支援までの時間を短縮できる。
各党からは、早期に制度を実施する観点から一定の理解を示す意見が出た。一方、減税を伴わない仕組みでは給付付き税額控除とは呼びにくいとの指摘もあった。制度名と実際の仕組みをどう一致させるかも、今後の協議事項となる。
6月会合で各党が見解を報告
支援額の具体的な水準は、今後の財源議論と連動する。原案では、恒久財源を確保した上で支給額を決めるとしている。日本と欧米の負担率や支援制度の差も参考にする。
過去の会議資料では、欧米の例を日本に当てはめた場合、年収270万円前後の層までが支援対象に相当するとの見方が示された。また、世帯年収500万円程度までは日本の負担が相対的に重いとの試算も示されている。世帯年収270万円では年間10万円、375万円では年間27万円程度の差があるとされた。
各党は政府原案を持ち帰り、意見を整理する。次回会合は6月3日に開かれ、各党が見解を報告する予定である。給付額、所得上限、子育て加算、給付一本化の妥当性が、夏前の中間とりまとめに向けた主要論点となる。
