日立とアンソロピック協業、インフラ分野でAI活用拡大へ

笠原 美琴
经过

電力や鉄道を軸に協業を開始

日立製作所は5月19日、米AI企業アンソロピックと協業を始めたと発表した。両社はアンソロピックのAIモデルを活用し、送配電や鉄道など社会インフラ向けのシステム開発を進める。日立が持つ産業分野の知見と、アンソロピックのAI技術を組み合わせることで、顧客企業向けサービスの高度化を図る。

今回の協業は、電力や交通にとどまらず、製造や金融など幅広い領域も対象となる。日立は顧客企業の業務効率を高めるAIシステムを開発し、運用まで担う方針を示した。AIを実際の業務基盤に組み込むことで、産業現場での活用を広げる狙いがある。

クロード活用で業務品質を向上

日立はアンソロピックの高性能AI「クロード」を用い、デジタルサービスの品質向上を目指す。電力、交通、製造、金融といった分野では、大量の情報処理や複雑な業務判断が求められる。AIモデルを活用することで、システム開発や運用支援の精度を高める。

協業では、顧客企業の生産性向上も重要な目的となる。日立はAIを使ったサービスを顧客に提供し、業務の効率化や管理機能の強化につなげる。さらに、サイバー攻撃への対策強化にも取り組み、デジタル基盤の安全性を高める。

社内導入と人材育成も推進

日立は外部向けサービスだけでなく、社内の業務改革にもアンソロピックのAIモデルを活用する。日立グループの従業員は約29万人に上り、同社は広範な組織でAI利用を進める方針を掲げた。社内業務にAIを取り入れることで、開発、管理、運用などの効率化を図る。

同時に、AI人材の育成も大きな柱となる。日立は10万人規模のAI人材を育てる方針を示しており、グループ全体でAI活用を支える体制づくりを進める。技術導入と人材育成を並行して進めることで、AIを事業全体に定着させる考えだ。

フィジカルAIの横断組織設置へ

日立とアンソロピックは、機械を自律的に動かす技術「フィジカルAI」の活用方法を探る新組織も設ける。新組織は米国、欧州、アジアを横断する体制となり、両社の専門家100人を配置する。産業機器や社会インフラでのAI活用を具体化する役割を担う。

フィジカルAIは、AIが情報処理だけでなく、現実世界の設備や機械の制御にも関わる技術として位置付けられる。日立はインフラや産業機器に強みを持つため、この分野での応用を検討する意義がある。両社は専門人材を集め、実用化に向けた活用領域を探る。

最新AIモデルは提携対象外

アンソロピックが開発した最新AI「クロード・ミュトス」は、今回の協業には含まれない。同モデルは、セキュリティー上の脆弱性を発見する能力が高いとされる。一方で、日立とアンソロピックの協業対象は、顧客向けサービスや社内業務改革、インフラ向けAIシステムの開発が中心となる。

日本企業とアンソロピックの連携は広がっている。NECも4月に法人向けAI分野でアンソロピックとの協業を発表している。日立の参加により、AIモデルを産業や社会インフラに取り込む動きがさらに具体化した。

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