インドの成長市場で完成車工場を新設へ
トヨタ自動車は5月11日、インド西部に完成車の新工場を建設すると発表した。新工場はマハラシュトラ州に設けられ、2029年前半の生産開始を予定している。インド国内で販売を伸ばす車種の供給力を高めるとともに、周辺地域への輸出も視野に入れる。
同社はインドを今後の成長が見込まれる重要市場として位置づけている。現地では経済成長を背景に自動車需要が広がり、従来中心だった小型車だけでなく、より大きな車格のモデルにも関心が集まっている。トヨタはこうした需要の変化に対応するため、生産網の拡張を進める。
西部マハラシュトラ州に4か所目拠点
今回の新工場は、トヨタにとってインドで4か所目の完成車生産拠点となる。生産能力は年間10万台で、プレス、溶接、組み立てなどの工程を担うラインを整備する。従業員は約2800人となる見通しだ。
トヨタは現在、インド南部のカルナタカ州で2つの工場を運営している。さらに2026年にも別の工場を稼働させる計画があり、今回の新拠点が加わることで、インド全体の生産能力は年50万台規模に広がる。今後も複数の工場稼働が予定されており、2030年代には年100万台規模の生産体制になる見通しとされる。
SUV需要拡大を受けた生産体制の整備
新工場では、インドで人気が高まっているSUVを生産する。トヨタはインド市場向けに小型SUV「アーバンクルーザー・タイザー」や「アーバンクルーザー・ハイライダー」などを展開している。経済成長に伴い、消費者の選択肢は小型車中心から中大型車へ広がっている。
インド自動車工業会によると、2025年度のインドの新車販売台数は商用車を含めて572万台となり、前年度比9%増で過去最高を更新した。日本貿易振興機構によれば、乗用車販売も昨年度に460万台余りへ拡大している。インドはすでにドイツや日本を上回る規模の自動車市場となっており、メーカー各社にとって重要性が増している。
日本メーカー各社もインド戦略を強化
インド市場では、トヨタ以外の日本メーカーも生産と販売の強化を進めている。シェアが最も高いスズキは、2030年度までにインドでの生産能力を年間400万台まで引き上げることを目指している。市場の拡大を受け、供給体制の増強を急ぐ動きが続いている。
ホンダもインドを重点市場と位置づけ、新車投入を計画している。日本メーカーにとってインドは、人口規模や経済成長を背景に販売拡大が期待される地域である。トヨタの新工場建設は、こうした競争環境の中で現地生産を強化する取り組みの一つとなる。
新興地域への供給拠点として活用へ
トヨタは新工場をインド国内向けだけでなく、中東やアフリカなどへの供給拠点としても活用する方針だ。インドはこれらの地域と貿易や人の移動で結びつきがあり、周辺市場への輸出拠点としての役割も見込まれる。会社は、インドと周辺地域の顧客に安定して車を届けるための生産拠点と位置づけている。
同社の2025年度のインド生産は39万8000台で、前年度比3%増だった。新工場の稼働により、インドでの生産基盤はさらに厚みを増す。トヨタは成長市場での需要を取り込みながら、新興・途上国向けの供給体制を広げる。
