買収前の開示遅れを巡る訴訟が転換点に
旧ツイッターの買収を巡り、米実業家イーロン・マスク氏と米証券取引委員会の間で続いていた法的対立が、和解に向かうことになった。ワシントンの連邦地裁に提出された2026年5月4日付の文書で、両者が和解に合意したことが判明した。争点となっていたのは、マスク氏が2022年にツイッター株を取得した際、必要な報告を期限までに行わなかったとされる問題である。
和解案では、マスク氏側が150万ドルを支払う。日本円では約2億3000万〜2億3500万円とされる。地裁がこの内容を認めれば、SECが起こした訴訟は取り下げられる。旧ツイッター買収を巡る一連の手続きのうち、株式取得時の開示遅れに関する問題は、終結へ進むことになる。
SEC提訴は証券法上の報告期限が焦点に
SECは2025年1月、マスク氏を相手取り訴訟を起こした。訴状では、マスク氏が2022年3月14日時点でツイッターの発行済み株式の5%を超えて保有していたと指摘した。一定割合を超える株式を取得した場合、証券法に基づいて速やかな情報開示が求められる。
SEC側は、マスク氏が同年3月24日までに報告する義務を負っていたと主張していた。産経新聞の報道では、実際の報告は期限から11日遅れたとされる。買収の意向を正式に示す前に株式取得を進めていたことから、開示の時期が市場に与える意味も争点となった。訴訟は、株式大量取得に関する透明性の確保を巡るものだった。
報告遅延による利益認定を当局が主張した経緯
SECは、報告が遅れたことでマスク氏側がツイッター株の追加購入にかかる費用を抑えたと主張していた。当局側は、その効果が1億5000万ドル以上に達したと説明していた。日本円では約235億円規模に相当する。SECは、こうした利益が不当なものだとして返還を求めていた。
株式市場では、大量保有者の情報は投資判断に直結する。特に買収の可能性がある場合、保有比率や取得状況の開示は株価に影響し得る。SECは、期限内に情報が示されなかったことで、マスク氏側がより低い取得コストで株式を買い増すことができたとの立場を取っていた。今回の訴訟は、個別企業の買収手続きにとどまらず、米証券市場の開示制度に関わる事案として扱われた。
信託への制裁金で和解案がまとまった内容
和解案の中心は、150万ドルの制裁金支払いである。SECが主張していた1億5000万ドル以上という金額とは大きな開きがあり、結果として大幅に減額された形での決着となる。マスク氏側は、この支払いにより訴訟の終結を目指す。
マスク氏側の弁護士は、和解合意を受けた声明で、制裁金は株式を購入したマスク氏側の信託に科されたものだと説明したとされる。さらに、マスク氏個人に対する訴えは取り下げられたとの見解を示した。これにより、法的責任の範囲を巡る当事者側の説明も示された。最終的な手続きは、連邦地裁の判断に委ねられる。
Xへの社名変更まで続く買収経緯を確認
マスク氏は2022年10月、ツイッターを約440億ドルで買収した。その後、同社の名称はXに変更された。今回の訴訟は、買収完了後の経営方針ではなく、買収に先立つ株式取得と開示の手続きを巡るものだった。買収から数年を経て、関連する法的問題の一つが和解に向かうことになる。
地裁が和解案を承認すれば、SECによる訴えは取り下げられる。これにより、旧ツイッター株の取得報告を巡る争いは、150万ドルの支払いを条件に終結する見通しとなる。大型買収の前段階で発生した開示手続きの問題は、当局の提訴、双方の主張、和解案の提出という流れを経て、最終判断を待つ段階に入った。
