台湾裁判所が半導体機密流出事件で企業責任認定

井村 智規
经过

台湾裁判所が企業責任を認定した判決内容

台湾の知的財産関連裁判所は2026年4月27日、半導体受託生産最大手TSMCの技術情報流出事件に関し、東京エレクトロンの台湾子会社に対して有罪判決を言い渡した。判決では、同社に罰金1億5000万台湾元、日本円で約7億6000万円の支払いを命じるとともに、刑の執行は一定条件付きで猶予された。
裁判所は、企業側が従業員の行為を適切に管理できていなかった点を重視し、監督体制の不備が違法行為を招いたと判断した。今回の判決は第一審であり、被告側は上級審に不服申し立てを行うことが可能とされている。

元従業員ら複数人に懲役刑を言い渡し

事件では、TSMCから転職した人物が技術情報の取得に関与したと認定され、主導的役割を担った元従業員に対して懲役10年の刑が科された。裁判所は、この行為が産業競争力や経済安全保障に重大な影響を及ぼす恐れがあると指摘した。
さらに、関連したTSMC元社員らにも懲役6年から2年までの刑が言い渡された。別の関係者については執行猶予付きの短期刑が適用され、関与の程度や捜査への協力状況が考慮されたとみられている。

先端半導体技術が標的となった背景

問題となった情報は、2ナノメートル世代および次世代半導体に関わる重要技術に関する内容だった。こうした技術は微細化が進む半導体開発の中核であり、装置や素材など多くの関連企業との連携によって成り立っている。
台湾政府は、先端技術が国外に流出することへの警戒を強めており、2022年には国家安全法を改正し、半導体などを国家の「核心技術」に位置付けた。これにより、関連する違反行為にはより厳格な刑罰が適用されるようになっている。

和解と再発防止策が刑の判断に影響

企業側は調査に積極的に協力し、内部体制の見直しや再発防止策の導入を進めてきたとされる。また、TSMCとの間で一定額の支払いを伴う和解に合意したことも明らかとなっている。
裁判所はこれらの事情を考慮し、直ちに刑を執行しない判断を示した。ただし、TSMCへの1億台湾元の支払いに加え、台湾当局への5000万台湾元の支払いを命じており、責任の重さを示す形となった。

半導体供給網に求められる管理体制の強化

今回の判決は、企業が直接的に機密取得に関与していなくても、防止策が不十分であれば刑事責任を問われる可能性を示した点で重要な意味を持つ。特に、複数企業が連携する半導体産業では、情報管理体制の整備が不可欠とされている。
台湾当局は今回の事例を通じ、国家安全と産業競争力を守る姿勢を国内外に示した。今後は、関連企業に対してより厳格な内部統制や技術保護の取り組みが求められることになる。

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