核軍縮体制の柱となってきた条約の位置付け
新戦略兵器削減条約(新START)は、戦略核弾頭の配備数を上限1550発に抑えるなど、米国とロシアの核戦力を数量面で拘束してきた枠組みである。2011年の発効以降、相互査察を通じて核戦力の透明性を確保し、両国間の戦略的安定を支えてきた。2019年に中距離核戦力全廃条約(INF)が失効して以降、新STARTは唯一の核軍縮条約となっていた。
期限切れに至る米露間の対立経緯
条約は2021年2月に一度、5年間の延長が合意されたが、その後の米露関係は急速に悪化した。ロシアは2022年2月のウクライナ侵攻を理由に、査察受け入れを停止し、2023年には義務履行の停止を表明した。こうした経緯の中で、失効期限を迎えるまでに両国は新たな合意に至らなかった。
ロシア側の主張と今後の姿勢
ロシア外務省は、新STARTが核軍拡競争の抑制に寄与してきたと評価した上で、失効の責任は延長提案に応じなかった米国側にあるとの立場を示した。条約失効後は、自国の判断で行動を選択できるとしつつも、対話による解決策を模索する用意があると表明している。核戦力の運用に関する制約が消えることで、政策の自由度が高まる状況となった。
米国の立場と中国要因
米国側では、ドナルド・トランプ大統領が、中国を含めない軍備管理は21世紀の現実に合わないとの考えを示してきた。新STARTは米露二国間の枠組みであり、中国の核戦力が制約対象外である点が問題視された。こうした認識が、条約延長を見送る判断につながった。
国際軍備管理体制に広がる影響
新STARTの失効により、米露間には核兵器を直接制限する法的枠組みが存在しない状態となった。核戦力の上限が失われることで、核軍拡競争が再び活発化するとの懸念が広がっている。第三国による核兵器保有や開発を後押しする要因になり得る点も、国際社会にとって大きな課題となっている。
